☆★ 恋と変の類似点 ☆★





その夜、ロロノア・ゾロ19歳は悩んでいた。

悩みの原因は、ただ一つ。
今現在、自分の目の前に座っている麦わら海賊団のコックにして、恋人のサンジ、19歳の事だった。

「ロ、ロロノアさん?。」

サラサラと癖のない綺麗な金の髪に、白い肌、そして透き通るような蒼い瞳。
クルリと巻いた変な形の眉も可愛らしく、その整った容姿を損なうこともない。

「お・・・お代わりだそうか?」

いつもきっちりと着込んだスーツで分かり難いが、バランスの取れた筋肉がつく身体は意外と逞しい。
ゾロほどではないとしてもちょっとやそっとじゃ壊れないだろうし、その長い脚から繰り出される蹴りは破壊力も抜群だ。

「あ・・、そうそう、それに合う美味いつまみがあったんだよなー。」

テーブルを挟んで向かい合っていたサンジがガタンと音を立てて立ち上がる。

「・・何処へ行く?」

向かい合ってから、一瞬も逸らすことなく眺め続けていた顔をなおもジッとゾロは見つめる。

「いや、倉庫につまみを取りに・・。」

視線を床に落とし、何故か脂汗をダラダラと流しているサンジにゾロはふっと笑みを浮かべた。
そしてサンジが立ち上がったばかりの椅子を指差す。

「座れ。」
「・・・・・はい。」

ストンと椅子に腰を降ろし、テーブルを見つめているサンジをゾロは眺める。
先程からずっと視線を落として顔を伏せている為、ゾロから見えるのはサンジのつむじだけだ。

「あーのー・・・。」

ナミやロビンに給仕するときは、ラブコックとして一オクターブ上げて喋るくせに、こうして恋人と二人っきりになっていてもサンジはハートを飛ばしたりしないし、第一元気よくゾロに話しかけてきたりはしない。
どちらかというと二人で語り合う事を避けているんじゃないかとゾロは常々不満に思っていた。

「なんだ?」

ゾロがそう答えれば、やっぱりサンジは目を合わせようはしないで机を見つめて脂汗を浮かべている。
そんなものを見ないで、こちらを見ろと言いたい所だが、なんとなく可哀想な気分になってそれはやめておいた。

「すごく視線が刺さるんですが・・・。」

なんでサンジはさっきから敬語で喋っているんだろうと首を傾げる。

「そうか?」
「・・・・・・。」

ただ見ていたかったから見ていただけなんだがと思いつつ、それがいけなかったのか?と思い当たる。
ラブコックと言ってる割に純情で可愛いやつなんだなとゾロはそんなサンジの初々しさに満足した。
サンジの頭から少し視線をずらしてその背後にあるソファーに目を向ける。
あからさまにホッと息を吐き出したサンジにそんなに気になっていたのかとゾロは呆れた。
もっと早く言えばいいのにと思いつつ、今度はチラチラとサンジに視線を送ることにする。

「ええっと・・ロロノアさん?」

なんでまだサンジは敬語なんだと思いながら呼びかけられたのでよかろうとそちらに目を向ける。

「・・・・お、俺、なんかした??」

へにゃりと眉を下げ、情けない顔でそう聞いてくるサンジをゾロは可愛いと思いながら見つめる。
ぷっくりとした唇がきゅっと固く引き結ばれていて、なんだか泣きそうな顔だなと思いながらゾロは首を横に振った。
特にサンジになにかされたという記憶はない。
もちろん、日常的な喧嘩以外でということだが。
むしろ・・・・・。

「じゃあ、なんでこっち睨んでるんだよ。アンタ、ここに来てからずーっと、そうやって俺のこと睨み付けてるじゃねぇか。」

ふにゃふにゃと情けない声で告げるサンジに、ゾロはサンジにはそう見えていたのかと驚いた。
自分の中では甘く蕩けるような、優しい気持ちでその姿を眺めていたつもりだったのに。

「なんだよ、用事があるなら何か言ってくれよ!。無言でプレッシャーかけられてコッチは落ち着かねぇんだよ!!。」

バンッとテーブルを叩いて叫ぶと今度は射殺さんばかりの鋭い視線を向けてくる。
そんなサンジも可愛いと思ってしまうのは恋人の欲目なんだろうかとゾロはのんきにその顔を見つめる。
それでも、確かにサンジの言うとおりに、このままでもいるわけにはいかないとゾロは先程から考えていた事を口にした。

「・・・やりてぇ。」

睫をパチパチと瞬かせてゾロを見つめてくる表情が可愛い。

「・・・は?今なんと??」
「だから・・・やりてぇって。」
「何を?」

目を丸くしてこちらを見つめている間抜け面にゾロは笑った。
やっぱりウチのコックは純で可愛いよな・・・と心の中で思いながら続ける。

「やりたいって言ったらそりゃあ、セッ・・・。」
「わあああー。」

ワタワタワタ・・まさしくそんな擬音を背負ってサンジが無意味に左右の手を振り回している。
いったい何をやっているんだと呆れて眺めていると微かに顔を赤くしたまま聞いてくる。

「あー、それって俺とお前でってことだよな?」

サンジの言葉にゾロは顔を顰めた。
ふたりだけしかいないこの状態でいったいコイツは何を言っているんだと呆れる。

「他に誰かいるのか?」

見えないだけで誰かいたらそれはそれで怖いような気もする。

「や、誰もいないけど。」

頬を赤くしたままサンジはチラリチラリとゾロを見ている。

「やりたくないのか?」
「やります!!やりたいです!!!」

その気がないのかと思いつつ聞けば鼻息も荒く答えてくる。
その姿にゾロはやれやれと思いつつサンジの後ろにあるソファーを指差した。

「それじゃ、そこに寝ろ。」
「・・・・は?」

きょとんと見返してくる顔に、本日何度目かの可愛いという感想を浮かべながらゾロはもう一度ソファーを指差した。

「なんだよ。初めてが床じゃ痛いだろう?ソファーじゃ不満か?」

一応ゾロも考えたのだ。
男同士の場合は負担も大きいと聞いたし、初夜は上陸してからホテルのベットの方がいいだろうかと。
だが、よくよく考えればメイクラブのその相手は、ゾロと互角に喧嘩するほど頑丈なサンジなのだ。
そこらの軟弱な男と違ってそこまで気を使わなければいけないといったことはないだろうとゾロは結論付けた。
さすがに床はどうかと思ったので妥協点でラウンジにおいてあるソファーを場所に選んだのだ。

「ああっと・・・、ちょっと、待って・・・?。ロロノアさん。」

ゾロとソファーの間を行ったり来たりしている視線を戻してサンジが軽く片手を上げている。
まだ何かあるのかと思いながらゾロはサンジを促した。

「なんとなーく、いや、気のせいかなあ、とも思うんですが。」
「・・・何が?」
「・・・・・・俺が下?」

恐る恐るといったふうに聞いてくるサンジに何を今更とゾロは思う。

「当たり前だろうが。」

告白してきたのはサンジからだったが、その後でキスを仕掛けたのはゾロの方からだったし、こうして二人っきりの時間を作り始めたのもゾロの方だ。
何度キスしてもサンジからはしてこないし、ゾロが濃厚なキスをしようとすると途端に逃げる。
そんな可愛らしい事を何度も繰り返してきて今更どんな不満があるというのだろう。

「上に乗っかりたいっていうならそれでもいいが、初心者だとそれはきついらしいぞ?やりたいってのなら俺は止めねぇけど。」

もしかしてその時の体位の事かと言いなおしてみる。
なんだか真っ白になっているサンジに首を傾げつつ、このまま引き摺ってソファーに移動してもいいんだろうかとゾロは考える。

「ちょっと待って!!落ち着こう!落ち着いて考えよう!!」

視線をあらぬほうに彷徨わせたまま叫んだサンジに、なんだよ、まだ何か気になることがあるのかと、ゾロは面倒くさい恋人だと眉を寄せた。

「や、とりあえず・・・体位の事じゃないし。俺が女役?って聞いたんだけど。」
「ああ、だからそうだって言ってるじゃねぇか。」
「なんでえ?!!」

妙に必死な顔で詰め寄ってきたサンジにゾロは驚いて少し身を引いた。

「なんでって、テメェの方が細いし、ウエイトもないし、第一、可愛いじゃねぇか?」

それ以外、他にどんな理由があるんだと思いつつ言葉にすれば、ポカンと驚いたように見つめられる。

「か、可愛い??」
「おう。すっげえ可愛いぞ。」

サンジの問い掛けににっこりと笑ってやるとボンと音をたてて白い頬が赤く染まる。
その顔を満足気に見つめてゾロは笑った。

「ほら、そういう顔すっともっと可愛い。」

上機嫌で告げればサンジはパクパクと酸欠の金魚のように口を開けたり閉めたりと無意味な行動をとっている。
かと思えば、いきなりガクンとその頭を下に向けた。

「・・・ゾーロー。」

いったい何事かと驚いてみていると、ぐったりといった風情でサンジに名前を呼ばれた。

「はあー、アンタねえ・・・、も、どーしたらいいんだか。」
「・・・・・。」
「もー、もう、ああ、どーしてくれよう。」

ガシガシと髪を掻き乱しているサンジにゾロは何かいけないことを言ったのかと自分の言った言葉を思い出す。
そして別に普通だったよな?と自分の中で納得して頷いた。

「あのねえ、アンタの方が俺の何倍も可愛いの、それ、分かってる?」
「・・・はあ?」

俺が可愛い?そりゃあ恋人を可愛いって思うのは当たり前だが、恋人の欲目にしてもそれは言いすぎだろうとゾロはマジマジとサンジを見つめた。
あまりに真剣な眼差しに、一瞬頭の中をチョッパーの姿が横切ったぐらいだ。

「し・か・も、すっげぇ色っぽいんだよ!身体全体で無意識に誘惑してくれるの!!」
「・・・・・は?」

サンジの主張にゾロはますます首を傾げた。
可愛いの次は、ゾロの事を色っぽいと言うサンジにやっぱりチョッパーを呼んでこようかと思う。

「アンタが傍に居るだけで俺は勃っちまうの!!」
「・・はああ?」
「それなのに、人が一生懸命我慢してんのに・・、どこでも平気でキスしてくるし、今度はあっさりヤりたいなんて言うし!!」

なんでサンジが我慢しているのかが分からない。
多少意味が分からないことも言われたが、サンジの言うとおりに何度もゾロはラブアピールしていたのだ。
顔を真っ赤にして、涙目になって主張してるサンジの姿にゾロは不思議そうに口を開いた。

「だったら、何の問題もねえだろ?やろうぜ?」

サンジの言葉が本当ならば、恋人として愛を確認することに何の不都合もないような気がする。
多少の認識違いぐらいはよくあることだろうと思いながら椅子から立ち上がる。
しかし、派手にビクンと身体を揺らしただけで立ち上がらないサンジに首を傾げる。

「なんだよ?まだ他にあんのか?」

ゾロの言葉にガックリとサンジが肩を落とした。

「いや・・も、いい。」
「そうか?なら、あっち行くぞ?」

ノロノロとした動作で立ち上がったサンジを促してゾロはソファーに足を向ける。
そしてソファーの前でハタと気付いた。
よくよく考えれば、ここのソファーにカバーなんていう高級なものはかかっていないのだ。
シーツとは言わないが、タオルか何か持ってきて敷かなければ汚してしまうだろう。

「おい、クソコッ・・・・。」

タオルかなにか取りに言ってくると話しかけようとしてふわりと身体が宙に浮く。
どうやらサンジに足を引っ掛けられたのだとゾロが気付いた時には仰向けにゴロリとソファに寝転んでいた。
そして身体の上にサンジが乗っかってくる。

「クソコック?」

俯き加減の前髪で表情が分からないが、視線を降ろせば微かに変化しているサンジが見える。
先程の言葉は嘘ではないんだなとゾロはのんきに考えた。

「おい、なんだよ?」

ゾロの上に腰を降ろしたままで動こうとしないサンジに眉を寄せる。
軽いとはいえ男一人腹の上に乗せているのだ。
あまり長時間そのままの体勢でいられるとさすがに重いし、苦しい。

「どうし・・・・。」
「・・・・やりたいんだよな?ゾロ。」

低いサンジの声にゾロはゆっくりと首を縦に振った。
ただ、このままだとソファーを汚してしまうかもしれないから、タオルかなにかを取ってくるまでは待っていて欲しいとサンジに言い掛けて、向けられたその眼差しに口を閉ざす。

「ゾロ・・・・。」

名前を呼んでサンジの顔がゆっくりと近付いてくる。
ああ・・キスするんだなと思ってゾロは目を閉じた。
ふわりと羽根のような軽さで唇が重なり、そして離れる。
子供のキスのようなそれに仕方ないヤツと思いながら溜息をつく。
キスをするならきちんとキスしろと抗議しようと目を開けて、鼻先にサンジの顔があって驚いた。

「ほら・・・、ゾロ。」
「クソコック?」

ゾロの呼びかけにフッと目の前でサンジが笑う。
どこか甘いその微笑にゾロは目を細めた。

「アンタ・・・全然気付いてない。」

スルリとサンジの手が肩に触れてピクリと身体を震わせる。
ゆっくりとその手が肩から二の腕を撫で手首まで降りてくる。
その手首を掴まれ、持ち上げられた指先にサンジの唇が触れた。
乾いた唇の感触に、くすぐったいような気持ちになってゾロはかすかに笑った。

「・・・コック?」

いまいちサンジの行動の意味が掴めずゾロは名前を呼んでジッと下からその顔を見つめる。

「アンタ・・、今、緊張で自分の身体がガチガチになってんの分かってる?」
「・・・え?」

そう告げたサンジの舌が、自分の指先をなぞる様に這って行くのを視線で追う。
唇からチラチラとのぞく赤い舌と熱い息にゾロは身体を震わせた。
そして緊張でガチガチだったのはサンジの方だろうと言い掛けて、まともに声が出ないことに気付く。
なんだかおかしいと思いながら、起き上がろうと身体を動かしかけてこちらも動かない事に呆然とする。
よく見ればサンジに掴まれている自分の手が小刻みに震えていた。

「あ・・・・なんで・・。」

なんとか捻り出した声は掠れて小さくてとても自分の声だとは思えない。
そんなゾロの様子にサンジが微かに笑ったのに気付いた。
そしてふわりとゾロが好きな笑顔を向けてくる。

「やっと気付いた?。」

サンジの腕が伸びてきて柔らかく髪を撫でられ、その動作に慄いた肩に笑われる。

「アンタが気付かないで怯えてたのは知ってたし、俺はもう少し待とうって思ってたのに・・・煽ったのはそっちだからな?。」

笑みを浮かべたサンジの蒼い目がゾロをみつめて揺れる。
ゆっくりと近寄ってくるサンジをゾロはぼんやりと眺めた。

「ほら、目閉じて、口開けて。」
「コッ・・・・・ぅん。」

柔らかく唇が重なってきて、薄く開いた口の中に熱いものがスルリと入ってくる。
咄嗟に目を閉じて顔を仰のけようとしたがサンジの手に顎を掴まれて固定されてしまう。
口の中に入り込んだのがサンジの舌だと理解した頃には、ろくに息継ぎも出来ないままにキスを受けた後で、ゾロは言葉もなくぐったりと四肢を投げ出していた。
チュッと音がして頬にキスされたなとゾロは頭の片隅で思った。

「堪んねぇよ・・・ゾロ。」

パサリと音がして目を開ければ、腕にあったバンダナがサンジの手によって床に投げ捨てられていた。
グイグイと腹巻とシャツを押し上げながら、ゴクリと喉を鳴らしたサンジをゾロは不思議そうに見つめる。
興奮でか顔を赤く染めたサンジはやっぱり可愛いよなと何処か麻痺したような思考の中でのんびりと思った。

「ゾロ、腕をこっち、俺に掴まってて。」

グイッと左の腕をサンジの肩に回されて言われたようにその背に掴まる。
あまり力は出なかったが掴まっているだけで良かった様で、ソファーから微かに浮いた身体から腹巻とシャツが取り払われた。
少し肌寒い外気に身体を震わせ、サンジの身体に縋る腕に力をいれた。

「・・・アンタって人は。」

温かいサンジの身体にホッと息をついてなおも擦り寄ると、腰を支えていた腕に力が篭ったのがわかった。
深い溜息のような声にゾロはどうしたのかとその顔を覗き込もうと顔を寄せる。

「手加減できないから、覚悟して。」

その言葉の意味を問いかける前に激しく唇を奪われて、勢いをつけてソファーに押し付けられた。

「・・っ、ぅう・・・。」

くちゅくちゅと唾液を絡められ、痛いぐらいに舌を吸い上げられサンジの肩口に手を伸ばしてそのシャツを掴む。
痺れたように力の入らない自分の指がサンジのシャツの上を何度も滑り落ちていくのを感じる。
煙草の味のするキスに応えながら、薄く目を開けて間近にあるサンジの顔をみればしっかりと開かれた蒼い瞳と目が合う。
ゆっくりと離れていく濡れた唇を目で追っているとギュッと力を篭めて抱き締められた。

「ごめん。好きだから。」

俺も好きだと答え掛けて、答える前にサンジにまた唇を塞がれる。
温かい指先と手のひらがそっと胸に触れたのを感じた。
なんだ痛いっていう女役をするのがサンジは嫌だったんだなとゾロは思って目を閉じる。
そんなに嫌なら痛いぐらいはどうってことないし、言ってくれれば女役でも我慢したのにと、ゾロは優しい口付けに酔う。
思ってた以上に心地よいサンジの腕に満足してゾロはゆっくりとその背に腕を回したのだった。













指先一つ、寝返り一つ打てない状態でゾロはぐったりと目を閉じていた。
行為の最中、聞いてない、話が違う、と思ったことが数回。
信じられない、嘘だろう、と心の中で喚いたのが幾数度。
恥ずかしい、死にそうだ、と思ったのは数え切れないぐらい。
はっきりいってサンジの顔がまともに見れない。
確かに聞いていた通りに痛かった。
そりゃあもう、普通に剣で切られるほうが余程ましだと思ったぐらいに。
だけど、それだけじゃなくて、自分の身体が意思とは別の動きをして、サンジに触れられるたびに頭の中がぐちゃぐちゃになったように気持ち良くて、キスも強請ったし、泣いた。
あんなになるなんて思わなかったとゾロは羞恥で目が開けられない。
行為が終わって、ひとりで後始末をしてくれて、今は優しく髪を撫でている恋人の顔が見れない。

「アンタさ・・・初めてでしょ?」

シュっと音がして辺りに燐の香りが漂う。
ついでしてきた紫煙の薫りにゾロはかすかに眉を寄せた。
動かせるのがそれぐらいだったというのもあるのだが。

「まったく経験ないよね?」

初めてだからなんだというのだと怒鳴りたいが、指一本動かせない状態で言ってみても格好もつかないだろうと思う。
ふうっと煙を吹き付けられ、軽く咳き込み目を開ける。
泣き腫らした目に煙が沁みて痛い。

「知識だけだよね・・。」
「・・・・悪いかよ・・。」

声も散々泣いたせいで、嗄れて掠れて自分の声じゃないみたいだ。
気力を振り絞ってなんとか睨み付ければサンジは楽しそうに笑っている。
何がそんなにおかしいんだと言いたいが、実際サンジにとって楽しかったんだろうといろいろと思い出してしまいゾロは顔を赤くする。

「いいや、全然、悪くねえ。」

そう言って笑ったその顔は、今までも何度も見てきた顔で、ゾロはそのサンジの笑みをずっと可愛いと思っていた。

「クソ嬉しかった。大切にする、ゾロ。」

そう言って口付けてきた男を不思議な思いでゾロは見つめる。
今までと同じ笑顔なのに今はほんの少しだけ違って見える。
可愛いだけじゃなくて、なんとなく背筋がゾクリとするような、サンジに抱き締められたときに感じた甘い快楽の階のような感覚。
薄く口を開いて舌を差し出せばそのまま濃厚な口付けに変わる。
ふっと艶っぽい声がゾロから漏れて、それに気付いたサンジが微かに口角を上げる。
身体全体から沸き立つような痺れるような感覚に、そうか、これがサンジが言っていた色っぽいってことなんだなと思いながらゾロはサンジの背に腕を回したのだった。






END++

SStop
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微妙にずれてるロロノアさんと、それに困っているコックさんでした(ばく
襲い受けというか、天然ボケで自分から罠作ってついでに嵌まってしまうなタイプの困ったゾロですが、まあ、幸せなら・・・(遠い目
これからのコックさんの教育次第だね♪と多少、いや・・・いろいろ不安を感じないでもないですがね(笑
ほのぼの・・というよりはボケボケ甘々ですが(笑
とりあえずこれはギャグなんです♪・・・・と、言っておきます(汗


(2005/10/08)