=11月11日=。。23時。。





11月11日 23時


大いに喰って飲んで騒いで踊って、誕生日は大宴会とばかりに羽目を外し騒ぎまくったクルー達は気分よく夢の中だ。
サンジは最後のグラスを棚に片付けてソファーに目をやりクスリと小さく笑った。
今日一日、このラウンジの仮の住人となっていた本日の主役が毛布を手にして眠っている。
サンジの片付けが終わるのをソファに移動して待っていたのだが、思ったよりも多かった洗物に手間取っているうちに睡魔に負けたらしい。
足音を殺してそっと近付くと規則正しい寝息が聞こえる。

「ゾロ・・。」

片手に握りこむようにしている毛布を端から解いてその身体に掛けてやる。
ついでとばかりに顔を覗き込み、サンジは柔らかな髪をそっと撫でた。

「お疲れ様・・・。」
「お疲れ・・は、てめぇの方だろうが、クソコック。」

毛布から伸びてきた手に腕を掴まれてサンジは苦笑いを浮かべた。
起こすつもりはなかったのだが、起きてくれればいいなと多少思いながらその髪に触れたのだ。
今にも眠りそうなゾロの様子に笑ってソファーの端に腰を降ろし、覆いかぶさるようにして目尻にキスをする。

「起こした?」
「寝てねぇ・・・。」

ムッとしたように答えたゾロにサンジは笑う。
寝たふりをしていたようには見えなかったし、ウトウトと眠りかけていた所だったのだろう。
キスも嫌がるでもなく受け入れて、髪を撫でる手にも気持ち良さそうな顔を見せる。
眠りに落ちる寸前のゾロはひどく無防備で幼い。
クスリと小さくゾロが笑い、下からサンジを見上げてくる。

「そういや、今日は・・・結局一日中テメェといたな。」
「ああ・・・そういえばそうか。」

正しくは前夜、ラウンジで一緒に眠ってから、いままでつかず離れずで一日を過ごした。

「珍しいよな。」

クスクスと笑っているゾロに確かにといってサンジも笑う。
夜、こうしてラウンジで過ごすか、船番を共にして過ごすか、それでも一日の内で二人だけで過ごす時間というのは極わずかしかない。
ゾロが鍛錬をしていたり、サンジが別のクルーの世話をしていたり、どちらも自分のサイクルで動くと完全に手の空く時間などほとんどないに等しい。
ましてや、それがただこうして共にいるだけという時間はほとんど皆無に近い。

「嫌だったか?」
「いいや・・・。たまにはこんなのもいいんじゃねえの?」

笑いながら背中に回ってきた温かい腕にサンジは引き寄せられるままにゾロに身体を重ねる。
狭いソファーの上に上半身だけ重ねたような格好で、サンジはゾロに抱き締められるままに身体の力を抜いた。

「クソコック。」
「・・・・なに?」
「有難う、楽しかった。」

柔らかなゾロの声にサンジはパチパチと瞬きを繰りかえす。

「何?・・・あ、もしかしてお手伝いの事?」

首を回してゾロの顔を覗き込むようにして問いかけるとゆっくりと首が縦に振られる。

「気に入ったんなら、いつでもどうぞ。」

クスクスと笑って告げると少し考え込むようにしてゾロがゆっくりと頷く。
手伝わせたと言っても本当に子供がお母さんの料理を手伝うかのような、本当に簡単なことだけだ。
唯一の例外はゾロがやりたいと強請ってきた飴細工だが、これも多少の技術は必要だが失敗したら困るという内容でもなかった。
案外手先は器用らしくサンジが見本をみせると何度か試行錯誤の後、きちんとその通りに再現してみせる。

「お母さん・・かな?」
「お母さん・・だな。」

ゾロにさせた手伝いのあれこれを思い出しながら呟いたサンジとゾロの声がぴったりと重なる。
奇しくも同じ事を同時に思っていたらしい。

「ゾロのママか。」
「ゲッ、髭の生えた母親なんかいらねぇ。」
「俺だって寝てばっかりのぐうたらな息子はいらねぇな。」

軽口を叩きあい、笑いながらどちらともなく唇を寄せる。
軽く触れ合い、次にしっかりと唇を重ねあう。
互いに競うように舌を絡め、濡れた水音と漏れ出す吐息を重ねあう。

「・・・・んっ。」

薄く水の膜を纏った熱っぽい眼差しに煽られて何度も口付けを交わす。

「・・・エロコック。」

はあ・・っと大きく喘いだゾロの目許にサンジは笑いながら小さく口付けを落とす。

「てめぇは、息子にこんなキスするのかよ。」

可笑しげにそういって見つめてくる瞳にサンジは軽く肩を竦める。
そして悪戯っぽい笑みを口元に浮かべた。

「クソ剣士、そういうてめぇはエロイ面見せて母親を誘ってんじゃねえ。」

サンジの軽口にゾロの目が丸くなる。
そして呆れたように笑ってサンジの髪に手を伸ばして緩く引き寄せるように引っ張る。
それに逆らうことなく顔を寄せてサンジはゾロの唇の端に一瞬だけ触れる軽いキスを贈った。

「まあ、俺たちに健全な関係は無理って事で。」
「ククク・・・違いねえな、エロコック。」

そのまま顔中に軽いキスを贈るサンジを止めるでもなく、くすぐったそうに見つめるゾロも楽しそうに笑っている。
少しずつキスの場所を移動してたサンジの唇が当然のようにピアスのある耳の後ろを吸い上げる。

「・・あっ・・。」

ピクリと身体を震わせて背に回っていた腕に力が入ったことに苦笑しつつサンジは耳元で囁くように問いかける。

「いい?・・・ゾロ。」

サンジのキスにもささやかな愛撫にも感じ入っていたゾロがほんのわずか呆れたような目を向けてくる。

「なに・・遠慮してんだよ?。」
「いや、一応聞いておこうかと思ってさ。」

聞くだけで止めるつもりはないのだとサンジは主張するように毛布を剥ぎ取り、ゾロのシャツに手を掛ける。
性急ではないが優しくもないその手管に笑ったゾロの手が自分の身体から腹巻とシャツを取り去る。

「バカコック、早くプレゼント寄越しやがれ。」

伸ばされた手でワイシャツのボタンが一つ一つ丁寧に外されていく。
その手を掴んでサンジは困ったように笑った。

「・・・ほんと適わねえなぁ・・。」

指先にキスを落として素早くシャツを脱ぎ去ると、裸の胸を合わせるようにぴったりと身体を重ねあう。
ドクドクと少し早くなった鼓動を互いに感じ取り、目を合わせて笑う。

「ゾロ、生まれてきてくれて有難う。」
「おう・・・。」

少し照れくさいような顔で笑うゾロにサンジは急に真面目な顔を向けた。

「それじゃ・・・いただきます。」

その物言いにポカンと口を開き、ゾロが爆笑する。
甘いムードの欠片も吹き飛ばすような豪快な笑いにサンジもひとしきり笑って、笑いの発作がおさまった頃にどちらからともなく互いの身体に手を伸ばす。


日付が変わるまであと少し。





END++

(2005/11/11 Happy Birthday Zoro )


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ゾロ誕SS 11月11日 23時をお届けでーすw
最後の最後も甘いままですねえ(遠い目
ゾロが幸せというよりはサンジくんが幸せな気がするんですが、まあ、仕方ないか(ばく
さて、全部読んでくださった人、胸焼けしてませんか?(汗
書いた人はすでに逃避に入っております(マテ

何はともあれ、『ゾロ、お誕生日おめでとう♪』

・・・で、永遠の19歳?なのかな(笑