=11月11日=。。12時。。
11月11日 正午
パーティ料理の下拵えをしつつ、昼食の準備を済ませたサンジは軽く肩をまわしてテーブルの方へと振り返った。
その口元がゆっくりと笑みを刻む。
「ふっ・・・・・可愛い奴。」
午前中、妙に絡んでキスを強請った後、大人しく背後でグラスを傾けていたのは知っている。
相変わらず背中に視線は注がれたままだったが、話しかけてくる様子もなく、時折瓶のそこがテーブルを叩く音がするだけで静かだった。
キッチンには出来たての昼食の食欲をそそるいい匂いが満ちているにも関わらず、テーブルの上に伏せられた緑の頭はピクリとも動かない。
サンジは手早く皿に盛られたオープンサンドやおにぎり、ナゲット、卵焼き、ボイルしたウインナーを手にしてキッチンを後にした。
「ヤローども、飯だ。」
午前中いっぱい甲板の掃除にと精を出していたクルー達に声をかける。
「うおおおー、メッシィー。」
「腹減ったぁー。」
叫んで駆け寄ってきた船長に苦笑しつつ、サンジはとりあえず手を洗ってくるようにと追い払い、いくつかの樽の上に皿を乗せていく。
「いい匂いね。」
女部屋に篭って飾りようの小物を作っていたナミとロビンが揃って甲板へと姿を現わした。
チョッパーが手を洗いに行くついでに気を利かせて声を掛けてくれたらしいとサンジは一緒に現れたピンクの帽子に優しく触れる。
その後ろから目を擦りながら現れたウソップが新鮮な空気だーと呟いて深呼吸を繰り返している。
朝から格納庫へ篭って火薬の調合にかかりっきりなのだ。
「簡単なもので悪いけど。」
そう言いつつオープンサイドを乗せた皿を手渡したサンジにナミとロビンはにっこりと笑う。
「夜のご馳走楽しみにしてるわね、サンジくん。」
「お手伝いできることがあったらいつでも言ってね、コックさん。」
「任せておいてください、ナミさん。大丈夫だよロビンちゃん、有難う。」
全員の手に食べ物が渡ったのを確認してサンジはキッチンへと取って返す。
飲み物を取りにと、そっと開けた扉の中で出て行ったときと同じ姿勢でスヤスヤと眠っているゾロの姿にホッと息をつく。
素早く珈琲とミルク、お茶、冷たい水の入ったポットと人数分のグラスを持って甲板へと取って返す。
ぎゃあぎゃあと騒がしい食事風景に苦笑しながら樽の上に飲み物一式を置くと後を任せてキッチンへと帰っていく。
静かに開いた扉の中ではやはり大人しく寝息を立てている本日の主役の姿があった。
「ゾーロ。」
サンジはそっと近寄ると耳元でゾロの名を口にする。
そしてそのまま頬に唇を寄せた。
「んっ・・・・。」
小さく身じろいで声を零した唇に軽く口付けてサンジは身体を起こすと柔らかな髪をゆっくりと梳く。
ふうっと深い息が吐き出され覚醒に入ったのを感じて問いかける。
「昼飯出来てるけど、喰う?」
サンジは話しかけながらゾロの首筋、肩、背中と優しく手でマッサージしていく。
テーブルに乗せた腕を枕に眠っていた身体は固く強張ってしまう。
こうして此処で眠ってしまったゾロにサンジがマッサージをするのも初めてではない。
優しく触れる手にホッとしたような息をついてゾロの瞳がゆっくりとサンジを映す。
「コック、てめぇは?」
寝起きで少し掠れた声の問い掛けと、静かに見つめてくる翡翠の瞳にサンジはふわりと笑みを浮かべた。
「ん、一緒に喰うよ。」
「なら、喰う。」
背を伸ばし軽く首を回しているゾロに笑ってサンジはシンクへと向かう。
そして取り置きしておいた二人分の昼食を手にテーブルへと戻ってくる。
そのサンジと入れ変わるようにして椅子から立ち上がったゾロがシンクで手と顔を洗う。
サンジは皿を置き、ゾロにタオルを手渡すとグラスを2個とワインを1本、手にしてテーブルへと戻ってきた。
「お、やりぃ、いいのか?」
サンジの手の中にあるワインの瓶を眺めて、それが高級というほどでもないがそれなりに値の張るワインだと気付いたゾロが目を輝かせて聞いてくる。
白だが、甘過ぎずさっぱりとした飲み口のこのワインを、ゾロが気に入っている事を知っているサンジは、寄航したときに目にすれば必ず1本は買い足している。
「ま、たまにはな。」
ソムリエナイフを使って手際よくコルクを取り、ゆっくりと二つのグラスに注いでいく。
月明かりの下で飲むそれとはまた違い、昼のキッチンで傾けるワインは爽やかな芳香を纏っていた。
「いただきます。」
「はい、どうぞ。」
グラスからワインを一口飲んだゾロが手にしたおにぎりに齧り付く。
パクパクとあっという間に一つ平らげると、卵焼きをパクリと齧り、次のおにぎりに手を伸ばしている。
相変わらず見ていて気持ちのいい食べっぷりだと頬を緩ませていると、食べるのを止めたゾロにジッと見つめられる。
ああ、あの言葉を言われるなとサンジが身構えた時。
「喰え。しっかり飯を喰え。」
少し怒ったようにゾロが言っておにぎりの乗った皿をサンジの方へ押しやってくる。
それに苦笑しながら一つ手に取ると少しだけ拗ねたように見つめられる。
「いつまでもグラス舐めてんじゃねえ。」
酒は好きだが食事をすることもゾロは決して忘れない。
忙しくなるとすぐに食事をすることを忘れてしまうサンジは意外にもこうしてゾロに窘められることが多い。
「喰うよ。」
パクリと一口齧りつけば満足そうに笑みを浮かべてゾロはウインナーへと箸を伸ばしている。
ひょいひょいとおかずを自分の口に放りこみ、何を思ったのかついでとばかりにサンジの口元へと卵焼きを持ってくる。
これは喰えという意味なんだろうかと、しばし躊躇していたサンジになおもグイっと卵焼きを挟んだ箸を差し出してくる。
「あー、ゾ・・・・。」
問いかけようと口を開けた瞬間に卵焼きを突っ込まれ、目を白黒させながらサンジはそれを租借する。
「美味いだろ?」
ニヤリと不敵に笑ったその顔にサンジも思わず笑う。
自分が作ったものに不味いものなどあるはずもないのだが、それでもゾロに食べさせてもらった卵焼きはいつもより格段に美味しいと感じる。
「ああ、美味いな。」
「・・・だろ。」
ニコニコと笑うと食事を再開したゾロのグラスにお代わりのワインを注いで、サンジも同じようにおにぎりに齧りつく。
会話のない二人だけの食事は静かにのんびりと進められていったのだった。
END++
(2005/11/11 Happy Birthday Zoro )
←BACK
*********************************************************************************************************
ゾロ誕SS 11月11日 お昼のお話ですw
内容はそのままふたりでお昼ごはん食べてます(何
サンジくんってまともに食事してなさそうだなーと思ってゾロに食べさせてみました(^^;
あ・・・甘々?(汗
ゾロよりサンジくんが幸せそうなのは気のせいでしょう・・ええ、たぶん(笑