吉見八代集落は、津山市北東部の山間地域にあります。東に加茂川が流れ、後ろは烏が仙山系の山々が連なり、川と山に囲まれた13戸の小さな村です。綺麗な水と、水はけのよい土、冷涼な気候が、とても美味しい米を作ってくれます。急傾斜の棚田で、12戸の元気な農家が米作りをしています。2024年は米の買い取り価格がかつてなく上がっています。

我が家は、第2種兼業農家(農業が従)です。安全でおいしいお米が食べたくて、私なりにこだわってコシヒカリ・ミルキークイーンを作っています。なるべく低農薬(一部は完全無農薬)で、堆肥を使った有機栽培を心がけています。
 
米作りの基本的な考え方 ※「井原式農法」に学びました
 毎日食べるものですから、やはり主食にはこだわりたいのです。食べる立場に立ってみると、キーワードは
 1.
安全であること
 2.
おいしいこと(これには味覚の個人差がありますので、一概にはいえませんが)
 3.できれば
生産者の顔が見えること  
 ではないかと思っています。
 まず、
安全面。最近、全国的に農産物販売所が増えています。道の駅もその勢いに一役かっているのでしょう。「地産地消」が合い言葉のようになっているのは、地場産に対する安心感なのかもしれません。地域の旬のものを食べてもらうというのは理にかなっています。
 さて、生産者から見ますと、安全の第一歩は農薬を控えることでしょうが、何でもかんでも無農薬がいいとは言えません。品質管理上、また作業省力化の観点からすれば適期防除も必要かもしれません。ただ、私は田植え後10日にする除草剤(JAより購入)1回のみで、後は一切の農薬(殺菌・殺虫)はしません。また、お客様の要望で一部は除草剤さえも使わない完全無農薬栽培(化学肥料も不使用)もしています。人力による除草や、木酢液などの天然素材を使い病気や害虫の防除に努めなければなりませんので、業務省力化はできませんがやりがいはあります。無農薬田は、最低5年間一切の農薬を使わないことが圃場の条件と考えています。そうすると、ミミズをはじめ多くの生き物たちが活動しています。
 最近わかってきたことですが、減農薬にすると虫食い米(斑点米)が少なくなります。無農薬はさらに病害虫に強いようです。理由はよくわかりませんが、近所の田より少なくなります。どちらにしても、農薬を控えるためには病気や害虫に強い稲を育てなくてはいけません。そのためには適切な管理により太くしっかりした苗を育てることに尽きると思います。昔から「苗半作」と言います。太く丈夫な健苗がその後の生育を左右します。
※農薬についての私の考え方は以下の通りです
一般的な農薬使用 慣行農薬使用 私の場合 代替またはどうするか?  備 考
@種籾消毒 殺虫・殺菌剤 農薬不使用 60度の湯に10分間浸す  
A田植え時苗箱 殺虫・殺菌剤 木酢液600倍を苗箱に  
B田植え後除草剤 除草剤 一部使用 JA「カチボシ」使用 一般に売られている米の農薬表示
(中期除草剤) 必要に応じ 不使用 必要なし(多少雑草あるも)  を見てください。いかに使用回数
C出穂期防除 殺虫・殺菌剤 木酢液を圃場水口から灌水  が多いかわかります。
 一般に売られている白米の、農薬使用表示を見て下さい。実に多くの殺菌・殺虫剤が使われているかわかります。
 つぎに
おいしさ。この基準は難しい問題ですが、稲においしい米を作ってもらうには、きれいな水で育てること、また植え付け本数を減らし根本まで太陽光が届くようにすることが大切かと思います。水について言えば、以前から水の富栄養化が問題になっていますが、これは米作りにも影響を与えていると言われています。生活排水等が多く入り込む下流の地域では特に水の汚れと富栄養化(特に窒素過多)が心配されます。また、施肥の面からみますと、窒素を多く与えすぎると、米はまずくなる傾向があります。私の田は幸い、清流加茂川の水や、山清水で作ることができるのでありがたいです。また、コシヒカリについて言えば、多肥にして育てると収量は上がりますが(倒伏する)、味は良くない傾向にあります。多収でなくほどほどに収穫するのが適切かと思います。また、最近の研究から出穂前にマグネシウム資材を与えると食味が向上すると言われています。(私は苦土石灰を使用)私の栽培面積1haのうち、3割は用水路の上にあります。つまり、天然水しかないわけで、水管理には苦労しますが、水がきれいで余分な物が入っておらず、安全純粋です。「天然水コシヒカリ・ヒデコモチ」と名付けています。餅米は天日干し(はざかけ)でしています。
 3番目には
生産者の顔。100円市場や地場産のものに人気があるのは、やはり身近な安心感のようなものがあるのではないでしょうか。過去にはラベルの貼り替えや、生産地の不正表示など、どれを信用していいのかわからない事件もありました。生産者から言いますとやはり消費者の顔が見えた方がよいのです。私の米は注文販売ですが、消費者の顔が見えることで、より安心、安全な米づくりをしなければといつも自分に言い聞かせています。これからは、ネットによる販売も少し始めました。「天然水……」と名付けています。
 では、どんな稲がおいしい米をつくってくれるのでしょう?以下は私の米作りです。農家の方は、参考になれば幸いです。また、質問にもお答えします。メールにてお知らせ下さい。
以下 我が家の米作り日誌を紹介します。

2024年4月1日 種籾消毒をしました。種子は毎年購入更新しています。また、種籾消毒は、農薬(殺虫剤・殺菌剤)を一切使わず70度のお湯に15分間浸す方法をとっています。これで全く無農薬で栽培することが可能となりました。この方法はすでに全国の先進地域で定着しました。私ももう10年になりますが、生育上特に問題はありません。
浸種。これはなるべく温度をかけずに、温度設定を低くしてします。日数はかかりますが(芽が出るのは積算温度なので)低温障害に強い苗になります。じっくりと待ちます。(15度で1週間)
4月8日 浸種により、鳩胸状態になったので播種をしました。家族総出で240枚の播種をしました。今年も1枚田んぼが増えました。大切なことは、薄撒きにすること。私は130c(1箱当たり)です。JAで180c位でしょうから、その約半分です。過密にして、もやしのような苗にするのではなく、1つ1つの種がゆとりをもって、太くて短い元気な苗にするためです。昨年から土入れ・灌水・播種・覆土が一度にできる播種機を導入したので、作業が楽に早くでききるようになりました。苗作りでほぼ稲の一生が決まってしまいます。後は育苗スペースに並べて、これまた常温で(育苗機は使いません)防霜用の保温シートをかけて、芽の出るのを待ちます。
4月16日 写真のように(見えにくいですが)5mm芽が出たので、育苗シートをはずし常温での育苗にはいります。今年も気温が低く、いつもより遅くなりました。なるべく温度をかけず、常温で育てると太く短い強い稲になります。最初に出る葉(しょう葉といいます)が地面から低いほどよいといわれています。(いつまでも保温シートをかけておくと、腰高苗になる)5ミリ芽が出たら覆いを取り昼は日光で育てます。すぐに緑濃い苗になります。水やりは最初は、日が落ちてから1回のみでやり過ぎず、太く短い苗になるようにします。代掻き田んぼにお客様。「さぎ」と「とんび」
5月6日 よい苗になりました。木酢液を潅水し根の張りや、病虫害に備えます。また、昨年から「万田酵素」を6000倍に希釈して葉面散布しています。網をかけているのは、すずめと害虫が産卵するのを防ぐためです。また、今年から籾殻燻炭を育苗土に約30%混ぜています。根張りとそろいがよいようです。そして、無農薬田には、米ぬかを120キロ入れました。あとは化学肥料を一切使わず無農薬有機栽培しています。苦労もありますがいつもどんな姿に育つのかいつも楽しみです。
5月12日〜 田植えです。第1葉(樟葉)が地上から約2ミリの太短い苗に育っています。苗丈は約12センチ平均3.5葉苗に育ちました。苗半作といわれるように苗作りは最も大切なところです。早く苗を成長させようと、温度をかけすぎる徒長苗になり、稲はこの比率で稲丈が成長するので、長竿の品種(コシヒカリなど)は倒伏しやすくなります。コシヒカリは倒伏しやすいといわれますが、私の経験では、関節の短い苗を作って、間断冠水をし、施肥をきちんとすれば、ほとんど倒伏しません。さて、今年も根の張り具合、茎の太さ、葉の数とも十分でした。籾殻燻炭がきいているのでしょうか。私は平均2本植えのため田植え直後はとても寂しい光景です。さらに苗と苗の間も広く取り、坪当たり50株に田植機のギアを調整しています。粗植することにより、苗は日光や風の通りがよくなり、成長が促進され、病害虫の影響も受けにくくなります。そしてその後の管理により、多くの分けつを始めます。
5月22日 最初で最後の農薬、除草剤をふりました。(無農薬田を除く)除草剤など使わないで除草ができればよいのですが、これだけは後々雑草に悩ませられるので避けられません。ただ、完全無農薬田では、除草剤も使えないので、写真のように草取りをします。昨年からは動力除草機を購入、自走式なので格段に楽です。2週間に1度します。やや大変な作業ですが、お客様の要望です。完全に除草することはできませんが、深水にすることである程度草の生長を抑えることができます。
5月28日 田植え後約2週間。私は元肥なしの無肥料で出発しますので、まだ稲は色が薄く隣の田の稲とは段違いです。でも、まだ肥料は与えません。この日は「過燐酸石灰」を反当たり10sふりました。根の張りを良くするためです。十分な根の成長がなければ、養分は吸えませんし、茎や葉も大きくなりません。分けつもなく、田んぼはさみしいのですが、今は苗が青年期を迎える前夜、しっかり足腰をきたえる時で、じっとがまんの毎日です。でも、まだ本格肥料はふりません。本格的に施肥するのは出穂前50日頃です。

6月13日 本格施肥です。今年も14−14−14化成肥料を反20s(窒素分で約2.4s)ふりました。稲の分けつの具合を見て、必要ならさらに施肥します。無農薬田では同時に除草機を押して、除草とともに根に新鮮な酸素をいれました。今年も、台湾より息子と嫁さんが手伝いにきてくれました。
6月23日 稲の姿を見て2回目の施肥です。20s/反。これで分けつが進み期待通りの姿になりますl。無農薬田では、2回目の手押し除草です。
7月7日 例年通り出穂の約30日前に苦土石灰反10sふりました。この肥料の私のねらいはマグネシウムで、これは米の食味をよくします。逆に窒素が多すぎると(肥料のやりすぎ)食味を落とすことがわかっています。慣行稲作では、この頃葉色が落ちて中干しに入り、その後穂肥をふりますが、私の苗は今が盛り、青々として葉色は濃く成長真っ盛りです。目下、分けつの真っ最中で2本植えの苗は約20本になり、茅のように扇形になり受光体勢を整えています。特にコシヒカリは穂肥を控えた方が倒伏の心配もなくまた食味も落ちません。ただ、肥料が大幅に上がっているためコストがかかり、困ります。14-14-14肥料が昨年は1290円→今年3480円
7月19日
 有機入り穂肥を20キロふりました。これは穂肥で、最後の施肥になります。
8月5日頃 出穂。今年は出穂時期は例年より早い出穂となりました。8月に入って、晴天が続いています。茎はしっかりしているので、実がのってくれるといいです。害虫の被害が心配です。
8月20日 お盆を過ぎても、晴天が続いています。倒伏はあまりありません。台風が心配です。
8月31日 超大型の台風10号が来ましたが、大きな被害はありませんでした。
9月10日〜 黄金色に実った稲を刈り取りました。今年も、カメムシ被害が少ないようです。イナゴは普段通り発生しました。カメムシとちがい、イナゴは米の身は食べません。天然水(清水)で育ったコシヒカリとミルキークイーンですが、近所の同じく収穫は平年よりかなり減収でした。一家総出の収穫作業で収穫の喜びは格別です。今年も、息子が収穫の手伝いに来てくれました。もちろん我が家の娘もコンバインに乗ります。子どもの頃からやっているので、ホッパー付きコンバインも上手なものです。一生懸命がんばってくれました。

 
※これからは2023年の取り組みです。

9月28日
 刈り取った無農薬田にわらゴールドをふりました。稲わらを微生物で分解し、堆肥化します。それから耕耘しました。これからは、土作りが始まります。冬の間に土作り、圃場の整備をしっかりして、来年のために地力をつけるのです。
11月1日 
無農薬天然水コシヒカリを120キロ限定で販売します。一袋玄米30キロで、送料込み20,000円です。ご希望の方はトップページよりメールください。 
  

11月15日 米ぬかを散布し(40s/反)耕耘しました。来年度へ向けての始まりです。
12月1日 無農薬米は販売終了しました。 
※冬期は、畦の補修、水路補修、水口補修などがあります。さらに、冬の間に土作りをすることで、来年おいしいお米ができます。
無農薬田の稲
直線上に配置
溝きり
除草後(手前)
米の花、白くきれい
除草機
除草器での田の草とり
田植え作業中

こだわりの米作り日記(天然水コシヒカリ)

吉見八代集落での米作りの様子をお知らせします。
黄金色に登熟しましたl
後は常温で育てる
5ミリで自然育苗にはいる
約90グラムの薄まき
わらゴールドl
畦修理

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直線上に配置
根もよく張って元気
万田酵素・木酢液散布
籾殻燻炭、自家製です